効率的で信頼性の高いフィルターによる、空気、加圧ガス、ベントのろ過は、医薬品の重要な品質特性を守り、最終的には患者様の安全を守ることにつながります。滅菌グレードの気体ろ過フィルターは、タンクやバイオリアクターからのガスの排出、圧縮ガスおよび加圧ガスのろ過、高温や高酸素条件のプロセスにおいて、微生物や粒子による汚染から医薬品を保護します。また、バイオバーデン管理用のフィルターは、重要工程以外の用途でのバイオバーデンを低減します。

Pall™ Life Sciencesは、ろ過に関する専門知識を活用して、医薬品プロセス開発・製造のさまざまなアプリケーションに求められる厳しい品質要件を満たす、気体ろ過のための製品ポートフォリオを構築してきました。

Pall™ Life Sciencesの高品質な疎水性膜は、ラボスケールから商業生産に至るまで、気体のろ過に対するさまざまなニーズに対応した、スケーラビリティのある幅広いフォーマットを取り揃えています。乾性、湿性どちらの条件下でも使用でき、微粒子や飛沫に加えて、カビ、酵母、細菌などの微生物や、ウイルスやファージまで除去することが可能です。ろ過滅菌グレードフィルターの膜材質は、ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) およびポリフッ化ビニリデン (PVDF) からお選びいただけます。フィルターカートリッジやシングルユースのプロセス要件に対応したフィルターカプセルが選択可能です。

適切な気体のろ過ソリューションを選択する際には、フィルターの種類やサイズだけでなく、滅菌方法、温度、規制要件、完全性試験要件などの、プロセス動作条件を考慮することが重要です。

Pall™ Life Sciencesの気体ろ過用フィルターのラインアップ

アプリケーション 推奨のPall™ Life Sciencesの気体ろ過用フィルター
ステンレス配管のシステム エンフロン® PFR
シングルユースシステム エンフロン® II
高温もしくは高酸素条件のプロセス エンフロン® HTPFR
バイオバーデン管理用 エンフロン® PFA
除粒子用 HDC® II

ステンレス配管のシステムにおける、気体のろ過滅菌(加圧ガス/ベントフィルター)

医薬品プロセス開発・製造における多くのアプリケーションでは、高い レベルの無菌性を保証することが求められます。ろ過滅菌グレードの気体ろ過フィルターは、不活性の圧縮ガスのろ過や、タンクやバイオリアクターから排出されるガスのろ過に使用できます。

バイオ医薬品では、その性質上最終滅菌法が適用できないため、製剤化や充填の段階でろ過により無菌性を確保することが、製品の安全性を守るための最後の砦となります。Cytivaのろ過滅菌グレードの気体ろ過フィルターは、気体のろ過のために設計されていますが、「ワーストケース」の条件として液体を用いて 107 cfu/cm2のBrevundimonas diminuta (ATCC19146)による、バクテリアチャレンジテストによりろ過滅菌性能が検証されています。

推奨のフィルター:エンフロン™ PFR

エンフロン™ PFRフィルターカートリッジおよびカプセルフィルターは、PTFE膜を採用した、ろ過滅菌グレードエアフィルターです。ステンレス製バイオリアクターに導入される窒素やさまざまな圧縮ガスのろ過、および充填工程(温度条件:60℃以下)のための高強度・長寿命の気体ろ過フィルターとして開発されました。疎水性で化学的に不活性なPTFE膜は、滅菌グレードのフィルターとして微生物除去に関するFDAの要件を満たしています。この膜は、液体で0.2 μm、乾燥気体で0.003 μmの除去率を実現しています。

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シングルユースシステムにおける気体のろ過滅菌(加圧ガス/ベントフィルター)

シングルユースシステムの製造工程への導入は、エアフィルターの選択に大きな影響を与えます。定置蒸気滅菌ができるステンレスシステムとは異なり、シングルユースのバイオリアクター、バイオコンテイナー(ディスポーザブルバッグ)、および充填システムでは、50 kGyまでのガンマ線滅菌に対応し、検証されたフィルターを選択する必要があります。

推奨のフィルター:エンフロン® II

PVDF膜を採用した、ろ過滅菌グレードエアフィルターであるエンフロンIIカプセルは、ガンマ線照射に対応しています。エンフロン II フィルターカプセルは、ガンマ線照射による滅菌済みで納入されるものと、納入後にガンマ線照射/オートクレーブによる滅菌が必要な非滅菌の状態で納入されるものがあります。

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高温もしくは高酸素条件のプロセスにおける気体のろ過滅菌(加圧ガス/ベントフィルター)

高温条件のエアー/ガス/ベント、オゾン化水などのタンクベントや、濃縮酸素などのろ過滅菌のアプリケーションでは、専用のカートリッジが必要です。

WFI (Water For Injction) タンクのベントフィルター

WFI貯蔵タンクには、ベントフィルターを取り付け、タンクのヘッドスペースで無菌的に空気の出入りを確保する必要があります。WFIは微生物の繁殖を防ぐため、フィルターアッセンブリーを含めて、通常は80℃以上に保ちます。温度を上げることは、フィルターの周囲に酸化環境が作られます。

オゾン化水タンクのベントフィルター

オゾンが溶存したオゾン化水は、強力で即効性のある抗菌作用があり、WFIや精製水の製造に使用することができます。オゾンは水にほとんど溶存しないため、溶存しきれないオゾンガスが発生し、タンクのヘッドスペースやエアベントフィルターは、そのオゾンガスにさらされます。オゾンとその分解物である酸素は強力な酸化剤です。そのため、フィルターは耐酸化性に優れ、通常40 ℃で100 ppbまでの水中濃度のオゾンにさらされても問題ないことが検証されている必要があります。

細胞培養アプリケーションにおける純酸素及び高酸素の空気のろ過滅菌

動物細胞や微生物の培養における生産性を向上させるために、バイオマス量が多くなる高濃度の培地が使用される傾向があります。単に曝気量を増やすだけでは酸素の供給が追い付かなくなる場合には、高酸素濃度の空気や、純酸素が使用されます。そのため、バイオリアクターの入口と出口に設置されている滅菌用の気体ろ過フィルターは、強い酸化環境にさらされることになり、特に培養が長期間にわたる製造プロセスでは、気体ろ過フィルターの劣化のリスクが生じます。したがって、このような用途の気体ろ過フィルターは、高酸素濃度空気や純酸素への曝露を想定して設計し、検証する必要があります。

推奨のフィルター:エンフロン® HTPFR

PTFE膜のエンフロン HTPFR フィルターカートリッジおよびカプセルは、酸化劣化に強く、ろ過寿命が長い、高温気体用のろ過滅菌グレードエアフィルターです。エンフロン HTPFRは、バイオリアクターや発酵槽への濃縮酸素の供給、オートクレーブ、無菌充填やブローフィルシール、WFIタンクベントなどのアプリケーションに使用されます。高温や高濃度酸素の条件での使用に最適化されたエンフロン HTPFRは、耐酸化性のメディアサポート、ドレイン、ケージ、コアを備えており、高温/高酸素のアプリケーションでの長時間使用が検証されています。

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バイオバーデン管理のための気体のろ過滅菌(加圧ガス/ベントフィルター)

ろ過滅菌グレードではない、バイオバーデン管理用の気体ろ過フィルターは、高い流量が求められます。バイオバーデンの低減が十分である場合に、非重要工程のベント用途や加圧ガスのろ過に使用されます。

推奨のフィルター:エンフロン™ PFA

疎水性PTFE膜のエンフロン PFAは、バイオバーデン管理用のろ過精度0.2 μmの気体用フィルターです。指標菌Brevundimonas diminuta (ATCC19146) を用いた、エアロゾルバクテリアチャレンジ試験による除菌性能を確認しています。非常に優れた流量特性により、低コストでバイオバーデン管理を実現可能です。

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除粒子用のための気体のろ過滅菌(加圧ガス/ベントフィルター)

一部のプロセスでは、滅菌グレードのフィルターなどの交換頻度を減らすために、プレフィルターの使用が有効な場合があります。プレフィルターは、粉体の乾燥システムのように、ガスのフィードに高レベルの汚染物質が存在する場合や、重要工程での最終ろ過滅菌用フィルターが長時間使用される場合に、コスト面や運用面でメリットがあります。

推奨のフィルター:HDC® II

すべての構成部材がポリプロピレン製であるHDC® II フィルターカートリッジおよびカプセルは、独自のテーパーポア・ポリプロピレンデプスメディアを組み込んでおり、さまざまなフォーマットで提供されています。HDC® IIフィルターは、純度、信頼性、経済性が重視される微粒子のろ過やプレろ過に有効です。

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