プロセスと製品の安全性確保のための液体のろ過とは
液体のろ過は、医薬品の生産工程のさまざまな場面で、汚染物質の除去に重要な役割を果たし、最終的には、医薬品の安全性と無菌性を確保します。培養工程での培地のろ過から、精製工程におけるバッファー添加や最終的な製剤化・充填に至るまで、液体ろ過用フィルターを正しく選択して検証することで、効率的で、医薬品の重要品質特性(CQA)を満たすプロセスを構築できます。
ろ過の課題は、液体の種類、製品、製造の規模によって異なります。また、最適なろ過のグレード(滅菌/マイコプラズマ管理/バイオバーデン低減)は、ろ過を実施するプロセスおよび関連するリスクアセスメントによって選択します。
液体ろ過用のグレードを選択
ポールでは、目的に合わせて選択可能な、さまざまなフィルターをご用意しています。
ろ過滅菌グレード (0.2 μm) | マイコプラズマ管理用のろ過滅菌グレード (0.1 μm) | バイオバーデン管理用 (0.45 μmもしくは0.2 μm) |
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ろ過滅菌グレード(0.2 μm)の液体ろ過用フィルターは、無菌プロセスにおいて無菌のろ液を得るために使用されます。 ポールは、少量注射剤 (SVP) から大容量注射剤 (LVP) まで、ろ過滅菌の最適化を支援いたします。
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主に培地のマイコプラズマ管理に使用されます。 ポールでは、流体の種類やスケールに応じた幅広いフォーマットをご用意しています。
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バイオバーデンと粒子の効率的な管理のために使用されます。 ポールのフィルターは、高い処理能力でコストパフォーマンスに優れたろ過を実現します。
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ろ過の難しい流体に求められる、新しいアプローチ
遺伝子治療薬の進歩や、複雑なバイオロジクス製剤や薬剤の処方、ドラッグデリバリー技術の進化により、高濃度で粘性の高い流体、リポソーム製剤、ナノ粒子などに対して効果的なろ過のソリューションが求められています。
ポールは、次世代医薬品の製造をサポートするため、新しいろ過用フィルターや無菌技術の開発を続けています。
遺伝子治療用レンチウイルスベクターの収率の最大化
遺伝子治療薬への関心の高まりにより、治療に必要となるウイルスベクター量は増加傾向にあり、商業生産に向けたスケールアップ技術は重要な検討課題の一つとなっています。各製造工程での損失を最小限に抑えること (収率を向上させること)は、製品が高額であることから最も重要な課題です。
レンチウイルスは、複数の遺伝子を伝達できるため、注目度の高いベクターとなっています。また、ろ過プロセスは注意深く検討する必要があります。なぜならレンチウイルスのサイズは200 nmと比較的大きく、せん断に非常に敏感な脂質二重膜のエンベロープ層を有し、半減期が8-12時間と短いためです。
ポールは、遺伝子治療薬のいち早い産業化に向けて、ろ過ソリューションを改良しています。また、ポールのスペシャリストは、お客様の抱えるプロセス開発および製造の課題について理解し、よりよい解決策を導き出します。
詳細については、お気軽にお問い合わせください。
モノクローナル抗体 (mAb) のろ過
モノクローナル抗体 (mAb) 製剤は、高頻度の投与を必要とする患者様からプレフィルドシリンジを用いた皮下注射が好まれるようになってきました。これに伴い、求められるmAbがより高濃度になり、最終ろ過滅菌が課題となっています。
高濃度mAbは凝集体の増加や高粘度化により、ろ過量およびフラックスの低下という課題が生じます。これらの影響を最小限にするため、多くの場合ではオーバーサイズのフィルターが選択されてきました。
オーバーサイズのフィルターを使用することは、液体のホールドアップ容量が多くなるなど、オペレーション上の非効率性をもたらします。フィルターに保持された液体は回収が難しく、このロスによるコスト面への影響は従来の静脈注射剤と比較すると大きくなります。また、収率の低下は、臨床試験用の薬剤の製造量に影響を及ぼす可能性もあります。
使用するフィルターを慎重に検討し、適切に選択することによって、医薬品の承認を遅らせるリスクを低減し、長期的に見て生産効率の高いプロセスを構築できます。
「高濃度mAb製剤の収率を最大化するために(英語)」ブログ公開中です!
リポソーム製剤の製造を支える非対称膜のフィルター
リポソームは、リアルタイムでの臨床応用に成功した初めてのナノドラッグデリバリーシステムであり、ワクチンのアジュバントとしても使用されています。これらのナノ粒子を用いた製剤は、局所投与、経口投与および注射によるドラッグデリバリーにおいて、多様な投与経路を可能にしています。
リポソーム製剤は、従来の製剤に比べてろ過による滅菌が困難な傾向があります。また、リポソームは粒子径が大きい(100~200 nm)ため、他の非経口薬に比べてフィルターの早期閉塞が起こりやすく、ろ過プロセスの構築には、フィルターのサイズを慎重に検討する必要があります。オーバーサイズのフィルターを選定してしまうと、過剰なホールドアップ容量が生じ、製品のロスにつながる可能性があります。
リポソーム溶液のろ過滅菌には、有効ろ過面積が大きく、非対称膜を備えたろ過滅菌グレードのフィルターを選択してください。標準的なカートリッジ254 mm(10インチ)あたりのろ過面積が大きなスケーラブルなフォーマットを組み合わせることで、商業生産においてコンパクトなフィルターシステムを実現できます。
フィルターの選定およびプロセスの最適化をお手伝いします
リポソーム、ナノ粒子、脂質、エクソソーム、エマルジョン、界面活性剤を含むような複雑な処方の製剤に対し、適切なろ過滅菌グレードのフィルターを選択するのは困難な場合があります。選択を困難にしている要因を正しく理解し、適切なろ過滅菌グレードフィルターを選択することで、医薬品の上市を遅らせることなく、長期的に見て生産効率の高いプロセスを構築しましょう。
ポールの応用技術研究所(SLS)は、50年以上にわたってお客様のろ過プロセスの最適化を支援してきました。お客様のプロセス流体の特性を理解し、フィルターの選定や、ろ過滅菌工程の最適化をお手伝いします。お気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
フィルターの使用方法について
- 医薬品製造用フィルターはいつ交換すればいいですか?
- フィルターをハウジングに取り付けやすくするためにO-リングの滑りを向上させる方法を教えてください。
- フィルターの乾燥方法を教えてください。
- なぜSupor®フィルターは水で濡れた状態で滅菌しなければならないのですか?
ポールのフィルターについて
フィルター完全性試験について
- 提供されるフィルターのバブルポイント基準値が検査証明書の基準値と異なるのはなぜですか?
- フィルターの使用前の完全性試験は必要ですか?
- 完全性試験で不合格が発生した際には、どのようにトラブルシューティングすればよいですか?
- 高温の水で完全性試験を行いたい場合、何に留意すべきですか?
- 完全性試験のためのフィルター湿潤時に背圧を負荷する(二次側の流量を制限する)とどのような効果が期待できますか?
- 温度は完全性試験(フォワードフロー試験・バブルポイント試験・ウォーターイントルージョン試験)にどのような影響を及ぼしますか?
- フィルター完全性試験不合格時のトラブルシューティングを行う場合、不合格の原因が継手またはハードウェアのリークであるかをどのように確認できますか?