迅速かつ確実なタンパク質精製



タンパク質などの生体分子試料の精製におきまして、標的とするタンパク質を選択的に分離するためには複雑な一連の工程を必要とします。その精製の工程において、タンパク質試料を調製するために、濃縮または脱塩を行う場合があります。メンブレンを用いた分離法は技術が確立しており、タンパク質の精製において極めて強い利点があります。ここに異なる分離技術を組み合わせることで、全体の工程を通して、処理の柔軟性や幅広い分離メカニズムのオプションを用いることができます。

Cytivaは、様々なサンプル量に適した限外ろ過用の遠心ろ過デバイスを提供しています。これらの遠心ろ過デバイスは、より速い流量およびより容易な取扱いを行えるよう設計し提供しております。

  • AcroPrep™ 384-ウェルフィルタープレート
  • AcroPrep アドバンス 96-ウェルフィルタープレート
  • AcroPrep 24-ウェルフィルタープレート
  • ナノセップ®遠心ろ過デバイス
  • Microsep™アドバンス遠心ろ過デバイス
  • マクロセップ®アドバンス遠心ろ過デバイス
  • Jumbosep™遠心ろ過デバイス



遠心デバイスの対応サンプル量





フィルタープレートの対応サンプル量

限外ろ過とは?



限外ろ過デバイスは生体分子試料の濃縮、バッファー交換、サイズ分画が必要な際に広く使用されています。限外ろ過は強力な有機溶媒を必要としない、フィルターメンブレンによる分離ですので、タンパク質にとって穏やかな条件で行える処理です。ポール・ブランドの限外ろ過用遠心ろ過デバイスは、核酸やタンパク質の一般的な処理過程を大幅に簡素化します。本デバイスはわずか数分で、50 μLから60 mLまでのサンプルから効率的に濃縮や脱塩を行います。Cytivaの遠心ろ過デバイスは、膜素材に生体分子低吸着性のメンブレンを使用しており、通常90%以上の高い回収率を安定して得ることができます。

限外ろ過はメンブレンを用いて、液体中のごく微小な粒子や溶解分子を分離する技術です。分離の主な要因は分子のサイズによるものですが、分子の形状や電荷といった要素も関与します。メンブレンの孔径よりも大きな分子はメンブレンのポリマーマトリックス内部ではなく表面で保持されることで、限外ろ過の過程において濃縮されます。メンブレンを使用しない処理 (クロマトグラフィー、透析、溶媒による抽出、遠心)に比べて、限外ろ過には以下のような利点があります。

  • 処理対象の分子に対してより穏やか
  • 不安定なタンパク質を変性させる有機抽出が不要
  • イオン強度やpH を維持
  • 高速、かつ比較的安価
  • 低温(例えばコールドルーム内)でも操作可能
  • 高効率、かつ分子の濃縮&精製の同時処理が可能
一般的に限外ろ過には以下の3つのアプリケーションがあります。

濃縮: 限外ろ過は低濃度のタンパク質サンプルやDNA/RNAサンプルを濃縮するのに便利な方法です。分子に影響を与えず (100 kbほどの大きなDNAもせん断せず、タンパク質の酵素活性の低下を招かない)、かつ高効率(通常、回収率は90%以上)です。

脱塩とバッファー交換(ダイアフィルトレーション): 限外ろ過は脱塩や塩交換、界面活性剤の除去、標識済み分子からの非結合分子の除去、低分子物質の除去、イオン強度やpHの迅速な交換を行いたい場合に便利で効率的な方法です。

分画: 限外ろ過では類似した分子量を持つ2つの分子を明確に分離することはできません。分子を効果的に分離するには、少なくとも分子サイズで1オーダー(10倍)の違いが必要です。限外ろ過を使用した分画は、タンパク質フリーなろ液の調製、DNAおよびタンパク質サンプルからの非結合/ 未反応標識の除去、PCR産物の精製といったアプリケーションにおいて効果的です。

限外ろ過メンブレンの分子保持率を左右する要因には様々なものがあり、分子量はそういった要因の一つに過ぎないということを認識しておくことは重要です。このため、特定アプリケーションに適したMWCOを選定するには、分子の形状や電荷、サンプル濃度、他の溶質の存在、操作条件など多くの要因を考慮しなければなりません。メーカーによりメンブレン製品のMWCO 定格付けに使用する分子が異なるため、特定アプリケーションにおけるメンブレン性能を検証するにはパイロット試験を行うことが重要です。

    透過分子を増加させる一般的変数:
  • 1 mg/mL以下のサンプル濃度
  • 球状分子より直鎖状分子
  • 遠心分離機の遠心力で生じる高い膜間差圧(これは、DNA断片などの直鎖状分子の場合は特に重要です。この場合、遠心力を減少することにより、膜による分子保持率を高めることができます)
  • 分子の良好な分散を促進するバッファー組成
  • 分子の形状を変化させるpHやイオン強度(最適でない場合は、コンフォメーションの変化や凝集の原因となります)


    透過分子を減少させる一般的変数:
  • 1 mg/mL以上のサンプル濃度
  • 分子会合を助長するバッファー条件
  • サンプル濃度を増加させる他の分子の存在
  • より低い膜間差圧(遠心分離機の場合での低遠心力)
  • メンブレンやデバイスへの吸着
  • 低温(24℃ に対する4℃)